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【公開】
2018年(日本映画)

【監督】
濱口竜介

【原作】
柴崎友香『寝ても覚めても』(河出書房新社刊)

【キャスト】
東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子

 

86点

今年TOPレベルの怪作。

クセのない美人でほんわかしている唐田えりかが演じてるからまだ中和されて見ていられたけど、主人公朝子は近年稀に見るくらいのサイコパスだと思う。

だからこそOPでねずみ花火の音だけで麦と心が通じてしまうのだろう。

東京に行くときにも春代には住所教えないのになぜか岡崎には住所を教えていたり、

東京で亮平にあった時も普通に「知り合いに似てたので」とか言えばいいのにジロジロ見つめた挙句「麦やんな?」って聞いたりするし、

亮平のキスを受け入れてからその後急に「やっぱ会えない」と言い出したり、と思えば震災後街中で会ったら抱き合ってその後5年間付き合ったりと謎行動だらけ。

麦が恋人だったことをマヤにいきなり話したかと思えば、公園で麦がいるって分かってからいきなり会いに行って「バイバイ」と叫んだりする。

しかも春代に言われるまでなぜか麦が芸能人になっていることを知らなかったのも謎。自分の興味あること以外は一切遮断しているか見えていない人間なんだろうか。

その他、最初の麦の行動は基本的に謎だし、串橋が急にマヤの演劇にケチをつけ始めたと思いきやいきなり2人が急接近したり、いきなり話に東日本大震災が絡んできたり、朝子と良平が縁もゆかりもないのに東北復興のボランティア活動をしていたり、5年たっても亮平たちが結婚していなかったり、麦が芸能人になっていて同じ顔の良平はどんな気分で見ているんだろうとか思ったり、といろんな違和感が積もりに積もって「どう考えても普通の恋愛映画ではないな」と思っていたタイミングで麦が再び現れるというホラー展開。

まず一度目の麦が昼間にいきなり朝子宅を訪れるシーンはマジでホラー。
何も言う前から「あああ麦だ!!」って思わせる東出くんの佇まいの使い分けとメイクや衣装の力はすごい。

ちょっと黒沢清っぽい。

そもそも外を見たらそこに自分と同じ顔の人間がデカデカと広告に出てるってだけで怖い。

そして大阪栄転と結婚を祝うディナーシーンの途中から麦が現れて麻子を
連れて車で発信するまでのシークエンスは白昼夢でも見ているかのよう。
「戦慄の絆」よろしく東出が画面に二人いることの違和感もすごかった。

麻子が電話でマヤに「もう戻らない」といって「二度と私たちの前に姿を見せないで」って言われるシーンの絶望感はかなりきつい。

そして相変わらず不可解な存在の麦。朝子の住所は岡崎から聞いたって言ってたけど、寝たきりで手も動かせない何も話せない状態になっている岡崎からどうやって聞いたというのか。あ~怖い怖い。

寝ても覚めてもってタイトルは麦と亮平の対比かな。
寝てる間に見てる夢のような存在の麦、目が覚めて生きる現実を一緒に歩いてくれる亮平。

麦が8年前と何も変わらずやってくる様は何故か何年も前のことを夢で急に見て思い出したりする時の感覚に近い。そして本来交錯してない現在の人間関係の中に過去の存在が異物として入ってくる夢もたまに見るし。

麦は朝子が行ったことのない北海道出身、亮平は朝子と同じ大阪出身。朝子が亮平と一緒に行った最北端の地は被災地仙台。朝子が思い留まって亮平のところに戻ることを麦に告げるのも仙台。

あの場所が朝子にとっての現実と夢の決定的境目。

突然朝子が気変わりしたわけじゃなく必然性がある。

そして海を眺める麦の背に別れを告げるショットと、川沿いで朝子が亮平を追い続けるロングショット(マジで美しいシーンだった)の対比。
麦は何があっても変わらないずっとそこにゆったりとある海。亮平は水量も変われば常に変わり続ける川。
怒っている亮平のところに戻った時、川が増水してるのもそういう意図だと思う。

最後2人は視線を交わさないけど、あの後どうなるんだろうか。

唐田えりかは話し方や眼差しがふんわりとしてるのに、ふんわりとしすぎて話が通じない、頑として考えを変えない人って雰囲気がしっかりしててよかった。

あえて8年間の時間経過を感じさせないようにメイク等もしてないように見えたのも朝子が何も変わっていないことの表れか。

後は伊藤沙莉の大阪女は最高だった笑。関西弁にも色々バリエーションがあるなって非関西人でもわかったという点でもいい映画だったと思う。

ホラーのような恋愛映画。恋愛映画のようなホラー。掴みきれない魅力がある映画だった。ティーチイン行って話聞いてみようかな。