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72点

 

骨太なサスペンスかつ人間ドラマで、いい映画だけど納得できない部分たくさんあったので以下に列挙しますね。

元少年Aが社会に馴染んで溶け込むことはできるのか、人を殺してしまった人間は幸せになってはいけないのかというテーマ。

 

あらすじを書いておくと

ジャーナリストの夢に破れて町工場で働き始める益田と、同じタイミングで工場勤務につく鈴木。鈴木は周囲との交流を避け、過去を語りたがらない影のある人物だが、同い年の二人は次第に打ち解け心を通わせていく。

ある日益田は工場勤務中に疲労による不注意で自身の指を切断する事故を起こしてしまう。そこで鈴木が的確な判断を見せたことにより、益田の指は再び繋がり、そのことで鈴木の工場内での人望も高まった。だが、あるきっかけと行動で、益田は鈴木がネット上で話題になっている17年前の連続児童殺傷事件の犯人ではないかと疑い始める――。

 

で、上記の益田、鈴木の話に夏帆演じる不幸な過去を持つ女、美代子と

とにかく映像、演技、演出はハイレベルなのでずっと惹きつけられるけど、実はみんな昔を振り返ったり、昔の罪やトラウマに悩んだり、人の過去を掘り返してるだけで現在進行形でデカい事件は起きない(予告で煽られている新たな子供の死体が発見される事件は実は本筋とは大きく関係はない)ので話は地味。

現在のクリフハンガーになるものがない中で徐々に掘り下げられる登場人物の背景や過去、罪が明らかになって行くことで話を引っ張って行く。しかも128分あるけど結構みんなの背景わかるまでもったいぶるし、間が長かったりする。しかも登場人物も全員が全員密接に関わってるわけじゃないのでエピソードも少し散漫。だが、キャストの演技が全員いいので飽きない。

息子が交通事故で3人の子供を殺してしまったタクシードライバーを演じる佐藤浩市、鈴木が昔いた少年犯罪更生施設職員の富田靖子の演技はもちろんさすがだし、元少年A鈴木の恋人になる美代子役の夏帆はこの映画のためなのかわからないけど痩せて目の下のクマも濃くなって、幸薄そうな感じが倍増。でもやはりめっちゃ可愛いけど。本当にダメな男に騙されてAVとか出演しちゃいそうな危うい雰囲気。コールセンターっていう職場の設定もリアルですな。

原作では夏帆も佐藤浩市も同じ工場で働いてるって設定らしいんだけどそれじゃいくらなんでも訳あり人間大集合過ぎるから賢明な改変。

で、本作の面白さをグイグイ引っ張るのは瑛太演じる元少年Aの鈴木。

5月発売の雑誌映画秘宝のインタビューで観客に共感できない部分もしっかり作りたいと言って役作りしたって言ってたんですけど、確かに掴みどころない、共感できそうでできない、分かり合えなそうと思いきや、でも人間らしい一面も見せる複雑なキャラの表現が見事。
そもそも彼の見た目の年齢不詳さが今回は元少年Aって設定に説得力を与えてるし、更生してるのかしてないのかわからない危うさもしっかりある。
カラオケのシーンでもあるようにニヤニヤしてることが多いんだけど、ラストの慟哭でも若干ニヤニヤ要素が入ってるのはすごいと思いましたよ・・。

それを受ける主人公益田役の生田斗真も熱演かつトラウマを抱えてしまったごく普通の人間としてしっかりはまってた。

後、山本美月の上司の古館さん大好き。彼が出てると作品の味わいが増しますね笑。

 

ただちょっと不自然なところも多い気がする。
まず気になったのは益田と鈴木の寮の先輩の清水(サイタマノラッパーのマイティ役でおなじみ奥野瑛太。演技自体はめちゃ上手い。)のキャラが粗暴だけどいい人なのかほんとにただ横暴なのか良くわかんないところ。益田が指切断しちゃった時にあんなに本気で心配して、真っ先に病院についてきてくれたし、その後鈴木とも美代子とも仲良くなってたのにあんなAV送られてきたからって無神経に居間でこれ見よがしに見たりするかね?しかもめちゃくちゃ暴力ふるいまくるしあいつ普通に逮捕できるだろ笑。
あの工場で働いてる描写も途中からなくなるし、土日の出来事しか描いてないだけじゃなくて途中からニートが集まってすんでるようにしか見えなくなってきてしまった。真昼間に寮いるシーン多いし。
あと美代子の元彼のAV出演斡旋野郎もあんな堂々と人痛めつけたり、昼間に女性の家に子分放ってレイプさせたりしてあいつ速攻逮捕だろ笑。無法地帯か。そして先輩にもAV野郎にもボコボコにされて、自分で自分の頭ガンガン殴ってもシーン変わると平気そうな鈴木の頑丈さに少し笑ってしまった。

それから富田靖子が少年厚生施設の職員なんだけど揉め事が起きて生徒が生徒を殺しそうになって「人が死ぬって何もなくなっちゃうって事なんだよ」ってすげえ説明的で長い説得台詞言うんだけどそれで少年が凶器投げ出しちゃうところはやっぱ安っぽく感じてしまう。

それから益田は昔見殺しにしてしまった友達への贖罪意識はいいとして記者時代に追い込んじゃった人たちのほうへの贖罪はしないのかって言うのも気になってしまった。やっぱ128分だと足りないのか。

みたいなところはまあ目つぶってもいいけどやっぱうんざりしてしまったのはラスト近くの生田斗真の大げさすぎる慟哭。あんな発声練習みたいに「あ~ッ!あ~ッ!」とか不自然だわ笑。

でもそんないろいろ文句が出てしまうのも本作の基本的レベルが高いのと難しい題材にひるまず挑んでいるからゆえですね。見ごたえはほんと十分です。