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94点

ぼくは基本的に怪獣が暴れたり、マッチョが殺しあったり、呪いや災害で人がバタバタ死んだり、ヤクザがたくさん出てきたり、後はその他不謹慎なことが起きる映画が好物です。まあなんというか露悪的かつ単純明快でストーリーが一本道名映画が好みなんです。いわゆる耽美的というか芸術映画的なものは割と苦手ですが・・・

本作は刺さりましたよ。

 

あらすじ

大学教授の息子エリオは家族と一緒に夏休みに南イタリアの避暑地にやってくる。エリオは非常に美少年かつインテリで高校生ながら考古学やハイデガーの研究を行い、ピアノの腕前も一流、イタリア語、英語、フランス語。ラテン語をすべて理解する天才だった。そこに教授の父の夏休みの間の助手として大学院生のオリバーという美男子がやってくる。アメリカ人でいかにも自信満々な雰囲気のオリバーをエリオは最初受け入れられずにいたが、だんだんと心惹かれていることに気づく。意を決して思いを伝えるとオリバーは受け入れてくれた。しかしオリバーがエリオの近くにいるのはこの夏休みだけ。だんだんと別れが近づいてくる・・・。

 

まあこの映画いいところだらけなんですが、とにかく、映像、音楽、ロケーション、主演2人、ストーリー、セリフ、全部が美しくてずっとたゆたうような気分で見ていました。

多分自然光中心で撮られてるから室内とかの場面ちょっと暗めだけど画面にあるものははっきり映ってる。これは映画館じゃなきゃ味わえない映像。予告編でも使われてた音楽が流れるシーンは特に美しかった。

 

ブロークバックマウンテンなどのほかのゲイ映画と違って主人公オリバーが自分がゲイであることに悩むわけではない。
それでも相手が自分を受け入れてくれるか、いつまでも好きでいてくれるか、相手のことを理解できているかという普遍的悩みは変わらない。それはオリバーのほうに置き換えても同じ。

エリオの家族たちは教授一家なので母親も含め食事シーンとか普通の会話で出てくる話題の教養の高さが異常なんです。芸術、政治、言語学と幅広い。こいつら知らないことなんか無いんじゃないかみたいな。

でもその分、オリバーと町に散歩に出かけたときに第一次大戦で死んだ英雄の軍人の像を見てエリオがそれに関する知識を披露したあと、彼がいう「僕は何も知らないよ」というセリフが切ないですね。こんな知識より相手のことや気持ちをもっと知りたいという思いが表れていたと思います。

 

その後二人が初めて結ばれる夜、タイトルにもある「君の名前で僕を呼んで」にあたる行為が行われるのですが(ほんとにお互いが相手を自分の名前で呼び合います笑)、

これは「相手と一体化したい」という思いの表れかなと。自分と相手の境界線がわからなくなるくらい愛し合いたい。それくらい特別で好きでたまらない存在。

エリオが辛抱できなくなって庭の果樹園の桃をくりぬいて所謂オ○ホールとして使うシーンもあるのですが、その行為を目撃していたオリバーはなんとその桃をそのまま食うのです。

気持ち悪いと思う人も多いのですがそれくらい相手を受け入れたいというのはノンケ、ホモ関係ない気持ちなのかなと。性欲と食欲は一緒ってよく言いますしね笑。

 

もうオリバーがアメリカに帰る直前に最後2人きりになってからはしゃぎまくる辺りからずっとウルウル来てましたよ。これが最後になるってなんとなくわかってたんだろうな。

一夏の思い出がそのまま2人にとって唯一解放された人生の夏休み。予告編でも流れる音楽に合わせて二人の美男子の刹那的な逢瀬がこれでもかってくらい映し出されます。

もうウットリですよ。

しかしこの映画はその二人が離れ離れになってしまった後に一番重要なシーンがやってくるのです。

静かな映画に見えてサービス満点ですよ!

あんまり具体的にならないようにいいますが

エリオがお父さんと話すシーンと

エリオが暖炉の前に座って・・のラストシーン。ここは場内でもすすり泣きが聞こえるくらいの感動シーンでした。

ほんとにラストまで心がわしづかみにされてました。

キャストもエリオ役のティモシー・シャラメはもうこれ異常ないくらいのはまり役。繊細な美男子をやらせたらこれ以上の役者はいないだろう。ちょっとした目線の動きとかで心情を表現するのが上手い。

オリバー役のアーミー・ハマーも24歳の大学院生という人生の若干中途半端な時期の青年として(彼は実際は31で割りとおなかも出てたりするんですが)すばらしい演技。

そしてシェイプオブウォーターで僕が一番感情移入したソ連のスパイを演じていたマイケル・スタールバーグがお父さん役なのですが彼は本当に最高の俳優ですね。貫禄たっぷりの外見に慈愛に溢れた目があり、このお父さんならラストでああいうこと言ってくれるかもという信頼感の沸く感じも見事でしたよ。

 

今年一番の美映画かつ切ない恋愛映画として一オシです!

 

※映画評論家の町山さんの解説聞いたらこの話の原作者のアンドレ・アシマンは実体験に基づいて、誰にも見せるつもりでもなく自分のために今作を書いたらしい。

その心中を考えるとまた泣けてくる。